1990年代にデビューしたモーニング娘。は、時にアイドルらしからぬ社会的なメッセージを歌詞に盛り込んだ楽曲で世間を魅了した。特に1999年発売の代表曲『LOVEマシーン』には「どんなに不景気だって」「日本の未来は 世界がうらやむ」といった歌詞があり、アイドルソングとして異彩を放った。

グループを生んだのは1995年に始まったテレビ東京『ASAYAN』である。『ASAYAN』は従来のオーディション番組と審査の型を崩し、審査を基本的に誰か1人が行う形式を採用した点が特徴であり、鈴木あみやCHEMISTRYなど多くの人気歌手を輩出したエポックメイキングな番組でもあった。

審査の代表的存在として小室哲哉やつんく♂が挙げられ、モーニング娘。結成の決断もつんく♂個人によるものだったという。個人の裁量で決められるがゆえに敗者復活といった“掟破り”が実現でき、つんく♂の思い切った決断は90年代後半の競争社会化と先行き不安を抱える人々に対して、ある種の希望を抱かせる面もあった。

この記事は『アイドル・オーディション研究　オーディションを知れば日本社会がわかる』（青弓社）からの一部抜粋で、モーニング娘。の楽曲に込められたメッセージが当時の番組構造や社会状況とどのように結びついていたかを検証している。