映画「盤上の向日葵」に坂口健太郎が主演し、渡辺謙、佐々木蔵之介らも出演する。原作は柚月裕子の同名小説で、映画では構成を大胆に改変していると伝えられる。

小説は山形県天童市での将棋のタイトル戦から始まり、壬生芳樹と奨励会を経ずに特例でプロとなった上条桂介の対局が軸に据えられる。物語は平成6年に埼玉県の山中で将棋の駒を抱いた白骨死体が見つかる事件を追う刑事の筋と、昭和40年代に虐待を受けた少年・桂介の成長を描く筋が並行して進行する。

刑事コンビは石破と佐野で、石破は「いい加減な性格だが捜査能力はずば抜けている強面刑事」、佐野は「元奨励会会員で将棋に詳しい真面目な若手」として描かれる。複数現存する名匠の駒を一つずつ確認するため日本中を飛び回る捜査は往年の警察小説の趣がある。

一方で少年の物語は切なく凄絶で、唐沢夫妻との出会いや将棋を通じた救い、父への複雑な想いが描かれる。桂介はやがて持ち前の賢さと奨学金で東大に入学し、そこで伝説の真剣師（アマチュアの賭け将棋師）東明重慶と出会う場面もある。原作では白骨と少年の物語が交差する瞬間に大きなカタルシスとサプライズがあり、映画ではヒューマンドラマの要素が増した点が注目される。将棋の駒を巡る謎と人物背景の再構成が見どころである。