宮崎駿監督の『となりのトトロ』は1988年4月16日公開のアニメーション映画である。児童向けの枠を超え、幼少期の記憶や自然との結びつきを鮮やかに描写している。

リアリズムとファンタジーの融合が極めて高い次元で実現され、昭和30年代の田園風景は光や空気の質感まで感じさせる写実性を持つ。宮崎駿監督の演出は細部に至るまで徹底した生活描写へのこだわりがあり、それがファンタジー要素の説得力を高める土台となっている。

編集は極めて穏やかで、情景描写にたっぷりと時間を割くことで作品に静謐なリズムと呼吸を与えている。物語は日常の積み重ねを重視し、家の探検や雨の中のバス停などの描写が観客に追体験を促す構成である。

母の病という背景を抱えつつも作品全体には生命力と優しさが満ち、メイの失踪を経ての終盤のカタルシスが際立つ。夜の「木を育てる」場面は壮大ながら内省的な演出として自然への畏敬を象徴している。

声優陣の演技も評価され、日高のり子（草壁サツキ 役）らの抑制の効いた名演が登場人物に真実味を与えている。これらの要素が結実して『となりのトトロ』は大衆性と芸術性を両立する古典として語り継がれるべき水準に達している。

公開から現在に至るまで多くの観客に安心感と感動をもたらし、国内外のアニメーション史において重要な位置を占める作品である。