日本酒の長期熟成による「古酒」に注目が集まっている。兵庫県加古川市の酒蔵で開かれた試飲ツアーには十数人が参加し、全国各地の約１６０銘柄を約２時間かけて飲み比べた。

匠創生（たくみそうせい）は古酒の製造販売や酒蔵ツアーを手がけ、「古昔（いにしえ）の美酒」というブランドで販売している。安村亮彦さんは認知度向上とファン拡大を狙い、ツアーは月２回、料金はひとり２２００円で各回１２人の定員が埋まるほどの盛況だ。

長期熟成酒研究会では蔵元で満３年以上貯蔵した日本酒を「熟成古酒」と定義している。仕込みや貯蔵条件で熟成の進み方は異なり、香りはカラメルやナッツなど多様で、年代が古いほど色や味が濃くなる傾向がある。

市場面では希少価値の高い古酒が高額で取引される例があり、１本１００万円以上での取引も報告されている。背景には日本酒の出荷量が２０２３年度に３９万キロ・リットルと、ピークの１９７３年度の２割程度に落ち込むなどの需要低迷があり、蔵元は差別化や観光資源化を見据えて古酒に力を入れ始めている。