日本酒を長期間熟成させた「古酒」に注目が集まっている。時間の経過で生まれる深い香りや味わいが魅力となり、酒蔵見学と試飲を組み合わせた取り組みが活発化している。

１１月中旬、兵庫県加古川市の酒蔵で行われた見学ツアーでは、全国各地の酒蔵から集められた約１６０銘柄の貯蔵状況を見学し、数銘柄の飲み比べが実施された。主催したのはパソナグループの子会社「匠創生（たくみそうせい）」で、ブランド名は「古昔（いにしえ）の美酒」。

「古昔（いにしえ）の美酒」は８月から貯蔵や販売に加えツアーを開始しており、月２回の開催、参加費は２２００円、定員は１２人で満席が続いている。大阪市の団体職員の女性（５２）は「日本酒は普段あまり飲まないが、古酒はまろやかで飲みやすかった」と話した。

長期熟成酒研究会では蔵元で満３年以上貯蔵したものを「熟成古酒」と定義しており、熟成によりカラメルやナッツのような香りが生まれると説明する。年代物は高額取引もあり、１本１００万円以上の事例も報告されている。

背景には日本酒全体の出荷量減少があり、国税庁によれば２０２３年度に３９万キロ・リットルとピークの１９７３年度の２割程度に落ち込んでいる。希少価値や付加価値を高めることで、古酒を通じた業界活性化への期待が高まっている。