鉄道の旅の楽しみとして親しまれてきた「駅弁」が2025年に誕生から140周年を迎える一方で、業界は逆風にさらされている。鉄道の高速化で乗車時間が短くなり、車内販売の激減や駅構内へのコンビニ進出などが影響している。事業者は1967年の402社をピークに、現在はその5分の1にまで減少してしまった。

静岡県内でも影響は深刻で、伊東駅の名物だった「いなり寿し」を製造していた会社が、物価高騰などの影響から創業80年を目前にして、9月に事業停止に追い込まれた。こうした現状を受け、駅弁という食文化を国の「登録無形文化財」にしようという動きが進んでいる。老舗各社は新たな取り組みで魅力を発信しようとしている。

専門家の放送作家･駅弁ライター 望月 崇史さんは、静岡の駅弁屋は「老舗」であると指摘する。中でも静岡市の老舗「東海軒」は明治22年創業で、鉄道敷設当時から駅で販売する権利を得た歴史を持つと、東海軒 加藤 貴久 代表取締役専務は語る。東海軒は明治30年の「元祖鯛めし」や明治33年開始のサンドイッチ、昭和13年登場の「幕の内弁当」、昭和30年の助六寿司などが長年愛され、「東海軒の四天王」と称される。

老舗の歴史と地域資源を生かす工夫が続く中で、保存と創新の両立が今後の焦点となっている。