フォンダシオン・ルイ・ヴィトンでゲルハルト・リヒターの大回顧展が10月17日から始まったである。会場はパリ西のブローニュの森に位置し、ルイ・ヴィトン財団が「文化への投資」を示す場として紹介されているである。

リヒターは1932年ドレスデン生まれで、若いころは“プロパガンダ絵画”を描くよう求められた時期があったが、ベルリンの壁ができる直前に西側へと脱出し、ケルンを拠点に制作を続けている。現在93歳（2025年時点）である。

展覧会はフォンダシオンのギャラリースペースをすべて使い、1962年から2024年までの油彩・水彩・立体作品など全275点を一挙に並べる構成である。来場者は絵画と写真、抽象と写実、現実と虚構といった境界を渡り歩くリヒターの表現方法を目にすることができるである。

代表作のひとつとして『Betty』1988年を含む作品群や、あえて画面をこすってピントを外す「フォト・ペインティング」シリーズも紹介されている。フォンダシオンは常設コレクションをほとんど持たず、企画ごとに異なる世界観を立ち上げる点も本展の特徴である。会場はフランスでも人気が高く、多彩な作品群を通じてリヒターの長年にわたる実験と変遷を俯瞰できる機会となっているである。