本稿は楽曲におけるオノマトペの効果に着目している。直近で印象的だった例として取り上げられているのが、Vaundyの「忘れる前に」である。

「忘れる前に」は東京メトロ「Find my Tokyo.」のCMソングで、穏やかなメロディに乗せて夢と現実を彷徨うような情景が描かれている。終盤に登場する「ツルリ、ツルリ」「ゴクリ、ゴクリ」のフレーズは、それまでの柔らかな語り口から唐突に現れ、音の響きとして強烈な印象を残す。

楽曲は見ていた夢が「バクに食われた」として終わるが、そのラストに繋がるこれらのオノマトペは、目の前にあったものが失われていく過程を生々しく表現しており、少ない言葉で聴き手の想像をかき立てていると論じられている。この記事では同様の手法を用いた他の楽曲例として、米津玄師の「IRIS OUT」でサビに挿入された「ボン」「バン」が劇場版『チェンソーマン レゼ篇』とのリンクで導入された経緯や、King Gnuの「):阿修羅:(」に登場する「クタクタクタ」「ハラハラハラ」「ジタバタバタ」といった複数のオノマトペの用例にも触れており、楽曲単体でもオノマトペが景色を劇的に変え、少ない語で豊かな想像を誘う表現手法であるとまとめている。