NHK大河ドラマ『べらぼう～蔦重栄華乃夢噺～』の第37回「地獄に京伝」では、恋川春町（岡山天音）の切腹が大きな衝撃を残した。蔦重（横浜流星）は春町が命をかけて守った黄表紙を絶やしてはならないと意地を張り続ける様子が描かれる。

一方で老中・松平定信（井上祐貴）は寛政の改革を進め、さらなる強硬策へと進む。出版統制や社会の締め付けが強まり、幕臣の戯作者たちや本屋仲間が次々と蔦重のもとを去る状況が生まれている。

蔦重は山東京伝こと政演（古川雄大）を頼みの綱とするが、政演はお咎め覚悟で筆を執ることに及び腰だ。てい（橋本愛）に諭されても蔦重は黄表紙を出し続けることを使命と考え、冷静な判断力を欠いている描写が目立つ。

作品は蔦重を取り巻く犠牲の多さも示す。瀬川（小芝風花）、源内（安田顕）、治済（生田斗真）、意次（渡辺謙）、新之助（井之脇海）らとの別れが彼を強くさせる一方、歌麿（染谷将太）は「常の蔦重なら、もっとしたたかに“そう来たか！”ってことを考えるよな」と述べ、今の蔦重に遊び心が欠けていると指摘する。言論や表現をめぐる社会の余裕のなさが主人公の変貌を促していることが、本回の主題の一つである。