米津玄師が劇場版『チェンソーマン レゼ篇』の主題歌「IRIS OUT」を制作する過程での苦戦を振り返っている。制作はツアー中に延び、本人も「『ツアー中に曲を書くと大変なことになる』ってわかっていたつもりなんだけれども、どうしようもなかった」と述べている。

今回は主題歌とエンディングテーマの2曲の依頼があり、映画制作陣からは“90年代”などのキーワードが提示されたが、最終的には米津に一任された。先に取りかかった「IRIS OUT」の作曲で思わぬ難航があり、既に「KICK BACK」を作りきったことが足かせになった面があったと語る。彼は「『KICK BACK』 2になっちゃいかんなっていう気持ちは、すごく強くありました。どう差別化するかっていうのは気を遣った部分でもあるし、いろいろやっていくうちに森の中に迷い込むみたいな感じでした」とも述べている。

その結果、今回はレゼ篇に特化させる方針を取り、「『KICK BACK』はどっか複雑怪奇なニュアンスがあって、ジェットコースターみたいな感じの曲になったんです。であれば、今回の『IRIS OUT』は、一直線にフリーフォールみたいにドンっと始まって、バッとそのままいって、パッと終わる。そういう“直線的な潔さ”みたいなものが出せたら差別化できるんじゃないかな」との考えに至ったという。

「IRIS OUT」はキャッチーなリズムとメロディーに驚くほどのエネルギーを乗せ、多彩ながらも凝縮された楽曲構成で駆け抜ける作品となった。曲は2分28秒と短く、インスト曲「おはよう」を除けば米津楽曲の中でも最短に位置する。制作過程では既存のイメージとどう向き合うかが大きなテーマとなり、レゼ篇の物語性に寄り添う音像が意図的に追求されたことがうかがえる。