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11月29日(土)、30代以上限定で「奥野ビル」「歌舞伎座」「パウパウアクアガーデン」を巡る “入りにくい店にも入る散歩会” を開催しました。
前回のキャットストリート〜表参道ルートでは、それぞれが興味のある「入りにくい店」に入りすぎて待ち時間が発生した反省から、今回は「できるだけ全員で行動する」ことを意識してルートを再設計。事前の下見で、見どころが多く時間超過の可能性も見えていたため、その前提で当日の流れを組み立て直して臨みました。
待ち合わせ場所は「セイコーハウス 時計塔」ショーウィンドウ前。
参加者が一人、また一人と集まるごとに、自然と会話の輪が広がっていく、穏やかなスタートとなりました。
自己紹介を終えたあと、まずは予定にはなかった「セイコーハウス」館内へ。
何度も前を通っているはずなのに、あらためて入ってみると、店内は広くゴージャスで、「こんな空間だったんだ」という発見からすでに小さな非日常が始まります。
エレベーターで6階のギャラリーへ向かうと、ちょうど福本潮子さんの展覧会「―藍の海―」が開催中。
藍染の作品が室内を静かな海のように染め上げ、空間全体が青い余白に包まれていました。さらに偶然にも14時からギャラリートークが始まるタイミング。ご本人を目の前にしつつも、今回のテーマとは違うため、名残惜しさを抱えながら会場を後にしました。この小さな「後ろ髪を引かれる選択」が、次の偶然へつながっていきます。
14時を前に移動したことで、ちょうど時計塔の鐘が鳴る時間に1階エレベーターホールへ到着。
そこで、標準小売価格1億5千万円というからくり時計「輪舞(ロンド)」の仕掛けが動き出す瞬間に立ち会うことができました。
「たまたま時間を早めたから見られた景色」。
スケジュール調整の結果として生まれた偶然ではありますが、街歩きならではのボーナスタイムになりました。
続いて向かったのは、2025年1月にオープンした「Ginza Sony Park」。
「銀座の公園」をコンセプトにした、あえて“何もない余白”が印象的な場所です。
奥野ビルに向かう前に、あえてここで回り道。
屋上スペースで小休止を挟みながら、銀座の中にぽっかりと空いた「余白」をそれぞれの視点で味わいました。賑やかな銀座通りとのコントラストも含め、「何もない」こと自体が一つの体験になるスポットでした。
銀座通りから裏側へ回りつつ、2023年に交通会館へ移転した「銀座わしたショップ」へ寄り道。
目的は「もずくの天ぷら」と「さかなの天ぷら」でしたが、残念ながら後者は売り切れ。それでも、さくふわプリプリの食感と、塩味・甘味・うま味が混じり合う「もずくの天ぷら」は大好評で、参加者からも笑顔がこぼれました。
エジプト料理の「コシャリ」を食べたときにも感じたことですが、食感が3つ、味覚も3つほど複雑に重なると、いつも以上に「特別な一口」になる気がしています。
そんなささやかな気づきも、こうした寄り道ならではの楽しみです。
その後は、アジアに特化した書店「単向街書店」を横目に眺めながら、いよいよ本日のハイライトの一つ「奥野ビル」へ向かいました。
「銀座コージーコーナー」本店を抜け、2本目の通りを右折すると、ついに奥野ビルが姿を見せます。
今回の参加者は奥野ビルを楽しみにしている方が多く、建物の外観が見えた瞬間、期待とざわめきが一気に高まりました。
建物前で撮影タイムを楽しんだあと、ビルが一般の雑居ビルであることも踏まえ、あらためてルールを共有しました。
・ギャラリーには、作家さんへの敬意を持って訪れること
・ショップに入るときは「購入を検討する意思がある」前提で
・2棟がつながる独特の構造や、手動で扉を閉めるエレベーターの仕組みの説明
・大人数で動くと迷惑になりやすいので、小グループに分かれて行動すること
この説明のあと、参加者はそれぞれの好奇心に従って館内へ。
主催は外で待機していましたが、戻ってきた皆さんが、手にしたチラシや購入品を嬉しそうに見せ合いながら高揚した表情を浮かべているのを見て、「この企画をやってよかった」と心から思えた時間でした。
奥野ビルを後にし、ここからは缶チューハイOKタイム。
節度を守りつつ、コンビニ調達の缶チューハイを片手に歌舞伎座方面へ向かいます。
あえて「ウインズ銀座」の横を通るルートを選んだことで、昼間の路上で缶チューハイを持つことへの違和感が自然と薄れ、かえって場になじむ移動時間になりました。
歌舞伎座近くでは、日本最古の印度料理専門店「ナイルレストラン」の外観も見学しました。
歌舞伎座では、まず1階の「お土産処 木挽町」を軽く見学したあと、地下の「木挽町広場」へ。そこからエレベーターで5階の「屋上庭園」に上がり、展示物を眺めつつ、日没の気配に包まれた銀座の空気を味わいました。
その後は、「五右衛門階段」を通って「四階回廊~想い出の歌舞伎座~」へ。
歴代の歌舞伎座にまつわる展示を見学しながら、銀座の「伝統」の側面に触れる時間となりました。最後は1階に戻り、歌舞伎座を後にします。
次の目的地へ向かう道中で立ち寄ったのが「新橋演舞場」。
偶然にも、松竹創業130周年、新橋演舞場100周年、劇団☆新感線45周年を掲げた公演「爆烈忠臣蔵」の興行中でした。
劇場前に漂う熱気や、観客の高揚した空気感に触れるだけでも、「舞台の街」としての銀座・新橋エリアの顔を感じ取ることができました。
辺りがすっかり暗くなった頃、本日のラストスポット「パウパウアクアガーデン」へ。
店内は照明が落とされ、淡い光の中に水槽のきらめきが浮かび上がる、静かなアクアリウム空間が広がっています。
ここでは自由時間を取り、それぞれ気になる水槽を覗き込みながら、熱帯魚や水草の世界をじっくり観察。
その後、向かいのスペースで再集合し、簡単なクロージングトークを行いました。
解散後は、イルミネーションがきらめくGINZA SIX方面に向かうルートを案内し、そこから先は各自の時間へ。
一時的に重なっていた一人ひとりの主観が、それぞれの日常へと戻っていく瞬間には、いつも不思議な心地よさを感じます。
今回は特に、好奇心旺盛な参加者が多く、どの場面でも活発に交流してくださったおかげで、道中の一つひとつの寄り道が、しっかりと「物語の一部」になっていきました。
ご参加いただいた皆さま、本当にありがとうございました。
またそれぞれの「入りにくい場所」や「気になるスポット」を持ち寄りながら、一緒に街を歩ける日を楽しみにしています。