福岡県八女郡広川町にある『藍森山』は、160年以上の歴史を誇る久留米絣の工房であり、現存する久留米絣工房の中で最も歴史が古い。国の重要無形文化財に指定される技術を受け継ぎ、現在は6代目の森山浩一と弟の典信が兄弟二人三脚で伝統を守っている。2年前の九州北部豪雨災害で甚大な被害を受けたが、100人を超えるボランティアの協力により見事に復活した。

今年6月にリニューアルした工房は天井を吹き抜けにして自然光が降り注ぐ明るい空間となり、床にはかつて使われていた藍甕の破片が埋め込まれて災害の記憶と復興への思いが刻まれている。工房では予約制の藍染め体験を用意し、ハンカチ（5500円）やTシャツ（11000円）などを制作できる。取材では神田謙信リポーターがハンカチ染めに挑戦し、天然の藍が空気に触れて鮮やかに発色する工程が紹介された。

藍染め体験者限定の『日替わりスパイスカレー』（1300円）は弟の典信が作る特別メニューで、取材日に提供されたのはバターチキンカレーと豚のキーマカレーのあいがけであった。カレー好きが高じて始めたというスパイスの香る本格的な味は好評で、藍染めと食のセットが訪問者に好評である。工房内のショップでは久留米絣を使った洋服や典信が手掛ける草木染めのアイテムも販売している。

体験・見学はHPまたはInstagram@ai__moriyamaで要予約と案内されており、『藍森山』は伝統工芸に触れながら特別な時間を提供する場として再生を果たした。