陶芸家の林康夫（1928年～）は、立方体の前面の角を斜めに切って表情を付けるという独特の造形で知られる。明るい白や青の色彩が、平面と立体の中間のような空間を際立たせる作品を多数制作してきた。

太平洋戦争従軍を経て前衛陶芸に取り組み、前衛陶芸の草創期から土による造形表現の可能性に挑戦してきた経歴がある。創造する心は止まらず、「作り手は『いま』の新しい表現を生み出さなければ」との考えを持ち続けている。

本年度、日本陶磁協会賞の金賞に決まり、その独創への姿勢が評価された。受賞を告げられた際には「前衛の人間は賞など受けるべきではない。辞退の言葉がのどまで出かかった」と述べ、前衛の矜持を示した。

作品はほかの誰とも異質だと評され、土のもつ造形的な可能性を拡張する試みとして注目されている。明るい色彩と斜めに切られた面が生む独特の空間感は、視覚に新しい問いを投げかける。

長年にわたり培ってきた挑戦と制作姿勢が今回の受賞につながり、今後の作品にも注目が集まるであろう。