記事は、＆Premium144号（2025年12月号）から、陶芸家・茶人、市川 考さんの茶の時間を紹介している。市川 考さんは茶道具一式を詰めた茶車を携えて現れ、何もない場所に茶席をしつらえて茶を振る舞うとある。

台湾の茶人・李曙韻（リ シュウユン）が淹れた台湾茶の土瓶に魅了されたことがきっかけで茶に開眼し、道具を作り、国内外の茶を飲み調べ淹れ続ける活動が18年続いていると記されている。市川さんは「お茶も植物のひとつ。水と火を使って植物の力をいただく、植物のスープのようなお茶の世界があります」と語る。

近年は民族茶や煮茶に関心を寄せ、毎年中国で開かれる個展に合わせて各地の少数民族を訪ねるのをライフワークとしている。チベットで出合ったバター茶は影響を与え、竹で攪拌器を作るなど淹れ方や味わいの追求につながった。

滋賀県・伊吹山の麓にある工房には土瓶や煮茶器、茶杯、片口など多様な茶道具が並び、灯油窯や電気窯、山の窯場にある薪窯など4つの窯を使い分けて制作していると紹介されている。工房はゲストを迎える場であり、茶はもてなしの中心にあるという。

茶葉は旅先で手に入れたものや頂き物が中心で、工房を囲む庭や畑で育てた植物や野山で手に入れた野草を加えている。記事は芭蕉の葉を敷いた茶席や葛の花やカキドオシのような野草を取り入れる実例を挙げ、道具と場と素材が一杯の茶に繋がる営みを伝えている。