益田勇吉が８日、「現代の名工」に選ばれた。大島紬の世界に飛び込み約６０年、「白泥大島」の生みの親として知られる人物である。

高校を卒業して３日後に喜界島を離れ名古屋市で過ごしたのち職人の道を志し、周囲から「紬をやるなら日本画と焼き物を勉強しなさい」と助言を受けたことが技術習得の背景となった。

尾前喜八郎の「なぜ大島紬には白がない？」という一言が転機となり、当時は白染めの肌触りが硬かったことに着目した。白薩摩焼の原料にもなるカオリンから紬向けの成分を分離する研究に取り組み、県工業試験場に入り浸って９年近くかけて柔らかく仕上がる白泥染めの技術を確立し、特許も取った。

その後は図案や色を追求し、故郷の海辺や岩陰の波の文様を紬で表現しようと模索。１５年かけて独自の織り方を編み出し、「渚絣（なぎさかすり）」と名付けた。

益田は７９歳で鹿児島市吉野１丁目の工房兼自宅に妻と暮らし、「職人をやってきたのは食べるため」と語る。研究と工夫で生まれた白泥大島と渚絣は伝統織物の表現を広げた業績として評価されている。