飯塚花笑監督の最新作『ブルーボーイ事件』の本編映像が異例の三本立てで解禁された。1960年代、国際化に向かう日本が売春の取り締まりを強化するなかで起きた事件を軸に、性別適合手術（※当時の呼称は性転換手術）をめぐる裁判を描く作品である。

一作目「裁判の始まり」では、赤城医師（山中崇）の初公判の重要な場面が切り取られている。錦戸亮が演じる狩野弁護士は、検察官の時田（安井順平）が控訴状を読み上げる場面に直面し、裁判官に対して被告の無罪を主張する構えを見せる。

狩野は「優生保護法違反について、事実関係においても、また、法律的な観点から見ても被告人は全くの無罪であると主張いたします」と反論し、被告の行為が治療であったことを示すため患者を証人申請する旨を訴える。

二作目「ブルーボーイたちの証言」では、メイ（中村中）、アー子（イズミ・セクシー）、サチ（中川未悠）が証言台に立ち、治療行為の是非や「手術を受けた彼女たちは“幸せなのか”」という観点で争われる。狩野はアメリカでの医療扱いを根拠に正当性を主張するが、メイは「勝手に病人扱いしないでちょうだい」と一蹴し、アー子は「アタイらは普通よ。普通に悩んで生きてるの」と述べ、サチは「私は私です」と訴える場面が描かれる。

三作目「サチと狩野」では、狩野が赤城医師の弁護を引き受け、当事者への理解を深めるに至る過程に焦点が当てられている。解禁映像は当事者の尊厳と医療・法の境界を問いかける法廷ドラマの厚みを示している。