岡垣町・波津のリノベーション空間「TONE-BASE」で、陶芸家ふたりによる作品展『薫らす（くゆらす）』が10月31日（木）から11月3日（祝）まで開催される。会場はかつて農機具小屋として使われていた建物を改装した場所で、赤いトタン屋根や古い木の梁が残る空間に陶のぬくもりと静かな熱が溶け合う。

出展するのは吉田陽生（よしだ・ようせい）さんと鈴木敬子（すずき・けいこ）さんで、倉敷の大学で陶芸を学んだ先輩と後輩の関係だ。在学中はつながりがなく、数年前に知人の個展で偶然再会した際にその事実を知ったという経緯がある。

吉田さんは沖縄の「やちむん」の窯元で修業を積み、現在は「碧のプロポーサー」として伝統に縛られない新しい表現を模索している。本人は「昔からモノを作ることが好きでした。でも説明書どおりではなく、自分で形を見つけていくものに惹かれたんです」と語る、その造形は力強くも柔らかい。

鈴木さんは手びねりの技法で作陶し、子育てをしながら少しずつ土と向き合って作品を仕上げる。日々の料理をしっかり受けとめてくれる存在感のある器を目指し、使う人の手の中でさらに表情を深めていく器が並ぶ。

展示タイトルの「薫らす」は煙や水蒸気のように静かに漂い、出会い、重なり合いながら形を変えていく意味合いをもち、ふたりの関係性と創作への思いを象徴している。里山と海のあいだにある静かな空間で、土の温度と人の息づかいが“薫らす”時間を生み出すと紹介されている。