宗晃子さん（51）は信楽焼の窯元に生まれ、大学卒業後に信楽窯業技術試験場で学んだ経歴を持つが、一度は「これで一生やっていけるのか」と感じて商社でデザインの仕事に就いた。

有名デザイナーの仕事に魅了され、「ゼロからものを作りたい」という思いから会社を辞め、約20年ぶりに陶芸の道へ戻った。2017年に制作販売を手がける事業「ファーマーズ ポタリー キルン」を立ち上げ、翌2018年に工房付きの一軒家を探す中で京都府和束町に移住した。

作品は茶や町内の自然をモチーフにしており、皿や小鉢の表面には凹凸で図柄を表現する手法を用いている。和束町の茶畑やノアザミ、風や川の音、カエルの鳴き声といった日常の風景がデザインに生きているという。

2023年には湯船マウンテンバイクランドのイベントに合わせて自転車のシルエットを図柄にした作品を制作するなど、地域イベントとの連携も行っている。

地産地消への取り組みとして、不要になった茶の木を灰にして釉薬と混ぜる試みを進めており、作品は自身のホームページや町内のイベントで販売している。現地販売で図柄の由来を説明できることを喜びとし、地元農家らと連携して「湯船手作り市」を企画、今年春に初開催し10月にも2回目を開いた。

宗さんは「陶芸家としてはまだまだ半人前だが、地域のために役立てることをしていきたい」と語っており、地域の自然と素材を生かす制作活動を続けている。