宇都宮市のギャラリー「Gallery HANNA（ハンナ）」で10月17日〜19日、企画展「虫譜（ちゅうふ）－昆虫学者と彫金作家のかたち－」が開かれた。会場には昆虫学者の松村雄さんによる昆虫標本や写真パネル、娘で彫金作家の松村麻矢さんによる和彫りを使った昆虫モチーフの作品や銀線細工のジュエリーが並んだ。

松村雄さんは北海道出身で、農林水産省で約30年間昆虫の研究に携わり、退職後は那須塩原市に移住して地域の昆虫調査や自然環境教育に力を入れている。展示標本は那須塩原市で採取された昆虫のほか、雄さんがネパールで収集した種類も展示され、国チョウのオオムラサキやトモンハナバチなど貴重な標本も並んだ。

麻矢さんは刀装具師の下で7年間修業し、ジュエリーブランド「麻矢」を立ち上げた。伝統的な和彫りや銀線細工の技術を生かしたジュエリーは、標本のそばにそれぞれをモチーフにした彫金作品を並べる形で展示され、自然の造形と金属の表現を対比して鑑賞できるよう工夫されている。

展示では「オオムラサキ」「シロスジベッコウハナアブ」などの標本のそばに対応する彫金作品が配されており、来場者は標本と彫金の細部を比較しながら鑑賞できる。麻矢さんは学生時代はあえて昆虫作品を作るのを避けてきたが、伝統模様の中に虫が描かれていることを知り意識が変わったと述べ、会場は父の少年時代とリンクできるこのギャラリーを選んだと話している。