ジャン・プルーヴェ展鑑賞(東京都現代美術館)

 2022年8月6日、東京都現代美術館で開催されているジャン・プルーヴェ展を鑑賞しました。プルーヴェは1910年代から1980年代にかけて活躍したフランスの家具デザイナー、建築家、そして構築家(コンストラクター)です。今回は家具や建設部材、3つの組立式住宅などの実物を見ることができる貴重な展覧会でした。

 前半は椅子、テーブル、デスク、キャビネットなど家具の展示。特に椅子は1930年代以降の作品が40脚以上もずらっと並び壮観でした。用途、素材、構造などを比べながら、設計と製造の思想をうかがい知ることができます。いずれも大量生産可能で合理的な造りながら、大胆なあるいは細やかなデザイン上の工夫で洗練されたものとなっているところに驚きました。

 

 後半はファサード・パネルやドアなどの建設部材や建物の全体模型の展示。いずれの部材、建物も、換気や遮光といった機能や可搬性、再利用性が考えられていて、現代の建物づくりでも大事なポイントがすでに押さえられているところに感銘を受けました。



 最後は何といっても実物まるごとの《F 8x8 BCC組立式住宅》の展示。製造から80年経っているにも関わらず組み上がる点は驚きです。組み立ての動画を見ながら、どのような仕組みで構成されているのかも知ることができました。



 観覧後の感想交換では、時代の流れにも関わらず古びないデザインの普遍性、設計から工場経営まで広く携わり事業を成功に導いたプルーヴェの多才さ・有能さ、また沢山ある椅子の中でどれが一番欲しいか?などが話題になりました。

 今回の展覧会では、創造性、工業生産性、機能性が高次でバランスした作品づくりに触れることができました。また特に家具については、どちらかと言えば建物よりも作家の個性が表れやすいため捉えどころがない側面がありますが、今回プルーヴェのデザインを知ったことで、今後家具を見ていく上で一つの基軸が得られたと思います。