0
0
能では、松や鶴亀などの長寿を祝い、天下泰平に国土を治める君主の世の長久を祝う曲目が幾つかあります。
関連するキーワードや説話を纏めます。
1.キーワード
松
松の花は100年に1回開き、それを10回繰り返すと千年となるため、千年を経た松を「十廻えりの松」といい、その四季を経ても色の変わらない松の葉を「千秋の緑」ともいう。松の文字を分解し「十八公」とも呼ぶ。
相生(あいおい)の松
二本の松が寄り添って生え、一つの根から立ち上がっているように見えるもので、共に年を経る夫婦に例えられる。
松の葉
和歌の異称。古今和歌集仮名序の「松の葉の散り失せずして真折(まさき)の葛(かづら)長く伝はり」に基づく。
真拆の葛は定家葛で、神事に多く用いら天鈿女命が天岩戸の前で踊った時、頭髪の飾りにしたといわれる。
2.説話・伝説
能「高砂」
高砂住吉の相生の松
「古今集仮名序」において紀貫之が「大和歌(和歌)は、人の心を種として、萬の言の葉とぞなれりける」とした上で、「高砂住之江の松も相生の様に覚え」と書いている。これは秘説によれば、高砂とは万葉集のできた奈良時代を指し、住之江とは古今集ができた平安時代の延喜年号(醍醐天皇)の時代(紀貫之にとっては現代)を指し、松の葉とは言葉すなわち和歌のことを指すため、高砂の松は万葉集の時代の古の和歌、住之江の松は古今集の時代の現代の和歌ということになる。
そしてそれらの和歌に込められた心の情感は、過去と現代の長い時を越えても互いに相通じ変わらぬものであることを、千年の時を越えても色が変わらず緑の葉をたたえる相生の松に例え、また落ち葉を掻いても尽きることなく生えてくる緑の葉は、未来においてもけして尽きることがない和歌との意味も込めている。
相生の松は夫婦にも例えられるため、「高砂」では高砂住吉の松の精が其々、高砂に住む老婆と住吉に住む爺の姿で現れ、高砂に訪問していた神官に松の謂れを告げた後、小舟に乗って住吉の方へ消え去る。神官が帆船で住吉に追いかけると住吉明神が現れ神舞を舞い、御世の萬歳を祝う。
https://www.the-noh.com/jp/plays/data/program_015.html