美術ラジオを聴いて語ろうvol.2~「痛み、病とアート」

5月4日、STAY HOME真最中のGWを利用し美術ラジオを聴いて語る会第2弾を開催しました!
今回のテーマは「痛み、病とアート」です。
ちょっと真面目な雰囲気のテーマです。
個性豊かなメンバーが集まり、男女の絵の感じ方の違いから“アート“の定義まで、語り合いは大変盛り上がりましたよ~!レポート長いです💦

■メンバー■
まきのり
のりちゃん
松尾さん
丸さん
まことさん

■横浜美術館HPのラジオ美術館より、「痛み、病とアート」を各自で聴講してきて語り合う
https://yokohama.art.museum/enjoy/radio/index.html
こちらのラジオの内容は、精神科医の斎藤環さんをゲストに「アウトサイドーアート」、「ジェンダーとアート」、「アートセラピー」などをキーワードにした対談でした。


1、精神疾患の患者の絵について
・ラジオで「精神疾患の患者の作品を集めた展覧会に行った」という話が出てきたが、それってどうなの?個人情報じゃない?
・M氏「俺だったら絶対見られたくない」
・作家死後の作品の取り扱いとも共通する問題がある。本人の意思かどうか分からない。


2、アートセラピーについて
・ドラマセラピーという療法もある。演劇を自ら行う療法で、他者の気持ちを共感する能力を養うことができる。
・シンプルに、声を出すことでオープンになれる面もあるかもね。
・他人との接触が限られていた人が他者との関わり合いを広げられる意味合いも大きい。
・ラジオ中では声楽療法が例に出され、「褒めることが大切」という話が出ていたが、それはちょっと違うんじゃないか。→「「「分かる」」」
・大切なのは「褒める」ことと、「褒められて認められる」という経験を体験することではないか。
・褒めるという行為だけ与えられればただの「褒められたいからやる」人間になってしまう。自主性を育むためには、「マズローの欲求」のように、「褒める」のはある段階を通過した後にようやく必要とされる行為なのでは。
・褒めると同じようだけど、認めるというのも大切だよね。
・M氏「おれ、褒められて育つタイプだからめちゃくちゃ褒めて欲しい!」


3、前兆・予兆が想像力を掻き立てる
・ラジオでは画家・松井冬子さんの作品が例として出てきた。彼女は「痛みを視覚可」することを目指しているそうで、例えば犬に噛まれた血まみれの足を描くのではなく、犬の牙が今にも食らいつきそうな足を描く。
・確かに松井さん的な描き方は痛みを感じるね。
・予兆・前兆っていうのは「愛とエロス」談義にも繋がるね。チラリズムも予兆だよね。
・Nちゃん「ごめん、そこが繋がってくるとは思わなかった」

※補足※
「愛とエロス」とは、同サークル内で開催した「芸術における愛とエロスを語る会」のことである!こちらの会では、直接的な場面や表現でなくてもエロい絵があるのは何故かという話題になり、「その先(情事など)が想像できてしまう作品はエロい」とみんなの意見がまとまったのだ!
参考活動記録『芸術における愛とエロスの表現の違い』:https://bn-tyconist.hatenablog.com/entry/2020/04/13/231226



4、アートは言った者勝ち?アートとは
・ラジオでアートはナルシズムという解説があって、なるほどな~と思った。
・でも、そもそもアートの定義ってなんだ?

ここでみんなの考えるアートの定義を聞いてみよう!
丸さん:人及び人が作ったもの全部
のりちゃん:美しいもの。自然や人物の生き方が美しければそれもアート
松尾さん:自己表現
まことさん:新しさ(オリジナリティ)があり、かつ人々の心を打つもの
まきのり:アート作品は作家の内面をのぞく媒体。でもアートは分からない

・そもそもどこからがアートなのか?→文字はアートじゃない?→絵日記は?→詩やポエムなど、文字数が少なくなるにつれ考える余白が生まれ、アート感が増す。
・アートは内面の表現、デザインは企業・人々が求める物の具現化。
・現代のアートではコンセプトも大事。
・やっぱり、アートは言った者勝ちということだね!
・松尾さん「まことさんが「新しく、人の心を打つ」という点を大切にするのは研究者の視点らしいですね」
・まことさん「確かに!研究は既存のものと如何に違うかをアピールしないと評価してもらえないからね」
・古いもの(歴史)に新しいものが積み重なることで新しいアートが出来ている。この蓄積って素晴らしいね。


5、コンテンポラリー・アートをアートと感じない理由
・新しさを生み出すことにフォーカスされすぎてる。
・ラジオで「スキルとパッションのバランスのうち、パッションが1出たくらいの割合がアートにとってはいい」と言っていたが、なるほどと思った。
・スキルがなくてもアートになり得るのでは?⇔スキルが無ければ描きたいものを表現することはできないのでは?
・コンテンポラリー・アートはデザイナー的。
・新しさは確かにあるが、そこから「人々の心を打つ」という要素が置いていかれている。
・コンテンポラリー・アートは私たちが生きている今と同時代のアートだから、定義付けが終わっていない。これから数十年経てば定義が出来、鑑賞の仕方も出来てくるかも。
・岡本太郎って生前に評価されていたからこそ作品が残ってるはずなんだけど、大衆レベルの認知になったのって死後。
・存命中に「評価されている現代アーティスト」とはいっても、その評価ってごく一部のアート業界人からだけなのかもね。
・批評家や画商、美術館が定義を付けて初めて客(大衆)がついてくる。
・現代アートにもっとコミットしていきたい。アート作品買いたいよね。
・歴史的に見てパトロンが持つ力は偉大。アートを買う金持ちが歴史を作っていく。


6、松井冬子さんの作品、「浄相の持続」は男女によって印象が違う?
・ラジオでは「浄相の持続」が男女により受け取り方が違う絵だと紹介があった。この絵の中の女性を、男性はただの死体だと感じ、女性は身体を見せびらかしていると思うらしいよ。

~男女に聞いてみました~
男1    死体
男2    グロイ、死体
男3    死体
女1    グロイ
女2    全体的に見て美しいとは感じる

男123「死体だ、、としか感想が出てこない(笑)」
女1「内臓とか血とかを直接描いて痛みとかを表現しようとするのって稚拙。もっと他のやり方でいくらでも痛みや病は表現できる」
女2「身体性を喚起して癒しを感じる。精神の穏やかさとか。つい見入ってしまう」
女1「それは分かる!だから私はこの作品から美しさは感じないけど、アートだと思う」
「男性って身体に対して鈍感だよね。女性って第二次成長での負担が大きいし、より身体を意識するようになる。でも、女性をアートにできるのって男性特有の魅力の理解があるからこそかも。だから男性!がんばれ!!!」
男1「その言葉はブーメランだから、男性の魅力を表現するために女性頑張ってください(笑)」
女1「はい(笑)。でもそれを共有できなくても、互いに認め合えたら良いよね」

・松井さんの絵は、スキルがあるからこそパッションを抑えて、グロテスクの中に美しさを保っているように感じる。
・よく見るとこの女性の内臓、幻想的な虫とか物質でできてるよ。妊娠してるし。
・ほんとだ~。ファンタジーだ~。


7、痛みを感じるアートとは
Q:痛みを感じるアートって何か思いつきますか?
・キリスト絵画。厳罰の教えだよね。
・戦争絵画。戦争は心が痛いよね。ピカソのゲルニカとか。
・草間彌生やゴッホの作品からは精神的な痛み・病みを感じる。
・テーマは関係なく、作家自身の痛みから目を背けないパッションのアートに痛みを感じる。


はい!レポートは以上です。
13時から14時で予定していたラジオ会ですが、語りまくって、終了したのは結局16時半頃でした。その後メンバーは夕飯の買い出しなどに出掛けてゆきました。

計40分のラジオからこんなに話が発展しましたが、特に議題を設定したわけでもなく、順番に感想を聞いていったらこんなに素敵な語り合いとなりました。
参加メンバーのパッションがすごい!笑。感謝です。
最近「愛とエロス」の語り合いが続いていたので(こっちも真面目なテーマ)、違う切り口からアートを見直してみると、また違ったアートの形が見えてきて。
やっぱりアート、奥深いですね。