東京都美術館で上野アーティストプロジェクト2025「刺繍―針がすくいだす世界」が開催中である。布地に針で糸を刺し縫い重ねる刺繍の多様な造形と表現に焦点を当てる展示である。

大正末から現代までの国内の5名の刺し手による、100点を超える刺繍作品が並ぶ。出品作には岡田美佳《ハーブの庭》1996 年（作家蔵）や尾上雅野《秋》1974 年（公益財団法人日本手芸普及協会蔵）、平野利太郎《サボテン》（部分）1955 年（町田市立博物館蔵）、伏木庸平《こもんべべ》（部分）2023-24 年（作家蔵）などがある。

平野利太郎や望月真理ら伝統技法の継承や、ベンガル地方に伝わる布「カンタ」を研究した作家の作品も展示されている。同時開催の「刺繍がうまれるとき―東京都コレクションにみる日本近現代の糸と針と布による造形」では、近代女子教育に関わる資料、戦争の時代の千人針、火消装束の刺子、そして刺繍的技法を用いた現代作家たちの作品を通じて刺繍表現が生まれた文化的・社会的背景を辿ることができる。

会期は開催中～2026年1月8日（木）で、12月15日（月）、22日（月）～2026年1月3日（土）、5日（月）は休室となる。開館時間は9：30～17：30、金曜日は20:00まで（入室は閉室の30分前まで）。観覧料は一般￥800、65歳以上￥500、学生および18歳以下は無料である。多種多様な作品と資料を通して刺繍表現の意味と可能性を様々な角度から楽しめる展覧会である。