2025.12.2

『褐色の血(中) 第二部 彷徨の地図』書評の要点

2025.12.2

キービジュアル 出典: brasilnippou.com

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11月14日にオンライン刊行された電子版書籍『褐色の血(中) 第二部 彷徨の地図』(高橋幸春著)についての書評が紹介されている。

本作は、主人公・児玉がパウリスタ新聞社からセクロ編集部へ歩みを移し、ジャーナリストとして独り立ちしようともがく日々を軸に展開する。

作品は移民社会の内部で起きる対立や嫉妬、新聞社の遅配といった生活の不安を描きつつ、現地化していく社会の中で揺れる〝日本人性〟を細やかに描写している。

特に移民70周年祭(1978年)の取材場面が印象深く、皇太子夫妻の来伯やガイゼル大統領の長い祝辞といった出来事を通して、日系社会が「ニッポ・ブラジレイロ」という独自のアイデンティティへと踏み出す瞬間が描かれている。

作中で主人公は「日本人の子孫であり、同時にブラジル人である」という二重性を肯定的に受けとめる過程を経験する。

また、ブラジルで出会った妻マリーナが日本に降り立ち、「日本人しかいない」という違和感を口にする場面は、移民文学としての鮮烈な視点の転倒を示している。

書評は、本作をひとりの青年の成長物語であると同時に日系移民史そのものを読み進めるような作品だと位置づけている。

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