金継ぎは単なる修復技術を超え、サステナブルなライフスタイルの象徴として世界で注目されている。

その背景を探るため、美術家で金継ぎを世界に普及させているナカムラクニオさんへの取材をもとに解説する。

ナカムラさんは「金継ぎで最も大切なことは、器に“景色”をつくることです」と語る。割れや欠けを隠すのではなく際立たせることで、新たな命を吹き込み、「不完全なる完全」を形にする点が金継ぎの真髄である。

本阿弥光悦の赤楽茶碗『雪峰（せっぽう）』の逸話は、失敗作が傑作へと昇華した例として紹介されている。窯の中で割れた器を漆で継ぎ金を蒔いて仕上げ、割れを「雪解けの渓流」に見立てたという話は、金継ぎが芸術性を帯びる契機となった。

金継ぎで生まれる「ひびの景色」は時間の筆跡と評され、器とともに過ごした年月の重みやものに寄り添う心を刻む。直すということは、単なる修理ではありません。モノの過去を再構築し、唯一無二の存在へと再生させること。

最近ではビジネスやデザイン分野にも広がり、国境や文化を越えて多くの人々の心を動かしている。英語表記の"Kintsugi"としても知られ、海外メディアでも取り上げられている。記事はJBpress掲載で、撮影は松田麻樹が担当している。