2008年公開の映画『ガチ☆ボーイ』を改めて取り上げるレビューである。主演は佐藤隆太、監督は小泉徳宏で、劇団モダンスイマーズの舞台を映画化した作品である。

主人公の五十嵐は事故の影響で、眠るとその日にあった出来事をすべて忘れてしまうという設定だ。大学卒業後に実家の銭湯を手伝う立場ながら、学生時代を有意義に過ごすためにプロレス研究会に入る。

日々の記録としてポラロイドカメラと手帳を携帯し、部長の奥寺（向井理）やマネージャーの麻子（サエコ）らに記憶がバレないよう奔走する描写が続く。練習や試合に打ち込む場面はコメディタッチで描かれるが、身体に刻まれる成長というドラマ性が底に流れている。

記憶の制約を青春ドラマとして昇華させている点が本作の特徴であり、サスペンス寄りになりがちな設定を温かい群像劇へと転換している。プロレス描写は笑いと真剣さが同居し、観客の感情を揺さぶる瞬間を生んでいる。

配信はU-NEXTで視聴可能とされ、当時のコメディ性と骨太のドラマ性が改めて評価されている作品である。