十四世喜多六平太記念能楽堂（上大崎4-6-9）が、国の文化審議会から国登録有形文化財(建造物)に登録することが妥当という答申を受けた。令和7年11月21日付の答申で、今後、令和8年3月頃の官報告示を経て正式登録となる見込みである。

喜多能楽堂は喜多流十四世宗家喜多六平太を記念した常設能楽堂で、鎌倉能舞台など複数の能楽施設を手掛けた榛沢敏郎の榛沢建築設計事務所が設計し、昭和48（1973）年に竣工した建物である。堂内の能舞台は昭和30（1955）年に竣工した舞台をそのまま用いており、改修には含まれていない。

令和7（2025）年に耐震補強工事を兼ねた改修が実施され、建物は地上2階地下2階、構造は鉄骨鉄筋コンクリート造である。主体部外観は地上より持上げて軽快に見せる意匠が特徴で、入口アプローチは御影石張の階段やトラバーチン貼の壁面で巧みに構成されている。

改修では西面外壁の一部をガラス窓とすることで外部から内部への視認性を高め、北面外壁の黒色塗装により敷地への直線的なアプローチを明確にした。1階および2階にロビーを配するなど、内部は観客を中心に設計されている点も特徴である。

近代的材料を用いた鞘堂に伝統的能舞台を内包した造形が保存の観点から規範として貴重であると評価され、保存活用を図るべく登録される運びとなった。区内の国登録有形文化財(建造物)は今回登録分を含めて7件になるとされる。更新日：令和7年11月25日。