映画「国宝」が異例の大ヒットとなり、日本映画（邦画）実写作品の興行収入記録（173.5億円）を22年ぶりに更新する見通しである。吉田修一の同名小説を李相日監督が映画化し、吉沢亮が喜久雄、横浜流星が俊介をそれぞれ演じている。

公開作品の内容は、任俠の一門に生まれ抗争で父を失った喜久雄が上方歌舞伎の名家に引き取られ、女形として人間国宝に上り詰める過程を描くものである。2025年6月に仏カンヌ国際映画祭で世界初上映され、6月6日に全国公開された。

公開直後の評判が広がり、8月にはメガヒットの目安となる興収100億円の大台を突破した。配給・宣伝を手掛ける東宝の市川南専務はスタッフ・キャストの出来栄えを称えつつ、ここまでのメガヒットは想定していなかったと述べている。

約3時間に及ぶ上映時間や歌舞伎という伝統芸能の重厚な描写について懸念があったが、公開初日の興収は1億円強で当初は30億が目標と考えていたという。だが「国宝」は公開5週目まで前週を上回り続け、70日余りで100億円を突破し、毎日約1億円の興収を8月まで維持したとされる。

原作小説は累計200万部を突破し、ロケ地への「聖地巡礼」が話題になるなど映画界以外へも広がりを見せている。興行の広がりは、公開直後に歌舞伎に関心を持つ50～60代の女性の来場が目立った点なども含め関係者や評論家の注目を集めている。