広島市東区の広島駅近くに、巨大ジオラマを備えたカフェ・バー「0番線の記憶」が2025年3月にオープンした。扉を開けると線路や駅舎が織りなす風景が広がり、廃線となった三江線を愛する店主の想いが随所に反映されているという。

店主の桧垣りかが語るジオラマは再現ではなく“イメージ”を重視しており、可部線や山陽本線を想起させる風景や太田川を思わせる川幅や緑地帯が配されている。巨大ジオラマは未完成の部分もあるが、来店者が角度を変えて楽しめる“妄想鉄”の世界だ。

利用は1線500円（30分）で、車両は無料で貸し出されるため初心者でも気軽に列車走行を体験できる。店内では桧垣さんの夫や鉄道好きの中学生たちが制作に励み、中学2年生の田邉幹基は227系レッドウィングを広電カラーに塗り替え改造し、同じ学年の沼田蒼空は厚紙で“野川第一踏切”を短時間で制作するなど、参加型の文化が育っている。

常連も月に数回通うなど地域の交流拠点としても機能しており、ある常連は「広島の白牡丹を一杯飲みながら自分の車両を走らせるのが楽しみだ」と語っている。飲食を楽しみつつ模型製作や走行を体験できる、新しいタイプの鉄道ファン向けカフェ・バーである。